認知症とは?種類・症状・進行・対応の基礎知識

認知症とは?種類・症状・進行・対応の基礎知識

認知症は、脳の病気や障害によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態の総称です。日本では高齢化の進展とともに患者数が増加しており、厚生労働省の推計では2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になるとされています。「物忘れが増えた」「同じことを何度も聞く」といった変化に気づいたとき、まずは正確な知識をもつことが、本人・家族・ケアマネジャーにとっての大切な第一歩です。

本記事では、認知症の定義・種類・症状・進行、そして家庭でできる対応と受診の目安までを、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。

認知症に関するより詳しい情報は、親ピラーページ「認知症の基礎・症状・対応 完全ガイド」もあわせてご覧ください。
認知症とは?

認知症とは、脳の神経細胞が何らかの原因で障害・減少し、記憶・判断・言語・理解などの認知機能が持続的に低下することで、日常生活や社会生活に支障をきたした状態を指します(日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン」より)。

「加齢による物忘れ」との大きな違いは、生活の質や自立に影響するかどうかです。歳をとれば固有名詞が出にくくなることはありますが、認知症では「食事をしたこと自体を忘れる」「自宅に帰れなくなる」など、体験そのものが失われていきます。

主な種類

認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因・症状・治療方針が異なります。

種類 割合の目安 主な特徴
アルツハイマー型認知症 約50〜60% 記憶障害から始まり、ゆっくり進行する
血管性認知症 約20% 脳梗塞・脳出血などが原因。症状が段階的に悪化しやすい
レビー小体型認知症 約10〜20% 幻視・パーキンソン症状・認知機能の変動が特徴的
前頭側頭型認知症 数% 人格変化・行動障害・言語障害が前景に立つ

このほか、甲状腺機能低下症・正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫などは「治療可能な認知症」として知られており、早期発見・治療で改善が期待できる場合があります。

主な症状・初期サイン

認知症の症状は大きく「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」に分けられます。

中核症状

脳の神経細胞が障害されることで直接生じる症状です。

・記憶障害:最近のことを忘れる(特にエピソード記憶)
・見当識障害:今日の日付・自分のいる場所・人物がわからなくなる
・実行機能障害:料理の手順を組み立てられない、段取りができない
・言語障害:言葉が出にくくなる、相手の言葉を理解しにくくなる
・失認・失行:物の形や人の顔がわからない、着替えや道具の使い方がわからなくなる
行動・心理症状(BPSD)

中核症状に、本人の性格・環境・周囲との関係などが加わって現れる症状です。

・不安・抑うつ、焦燥感
・幻覚・妄想(「財布を盗まれた」など)
・徘徊・夜間の不穏
・攻撃的な言動

BPSDは適切なケアや環境の工夫によって軽減できる場合があります。

見逃しやすいサイン

認知症の初期症状は、本人も周囲も「加齢のせい」と見過ごしやすいものが多くあります。以下のような変化が続く場合は注意が必要です。

・同じ話・同じ質問を短時間に繰り返す
・約束や直近の出来事を丸ごと忘れる
・財布や鍵の置き場所を頻繁に忘れ、「盗まれた」と思い込む
・以前できていた家事や趣味を急にやめる
・日時や曜日の感覚がずれてきた
・慣れた道で迷うようになった

こうしたサインが複数みられるときは、専門医への相談や長谷川式認知症スケール(HDS-R)などの認知機能検査を検討することをお勧めします。長谷川式認知症スケールは30点満点で、20点以下が認知症疑いの目安とされている簡便な検査ツールです。

原因・なりやすい人

認知症の原因は種類によって異なりますが、共通するリスク因子として以下が知られています(厚生労働省「認知症施策推進大綱」参照)。

・高齢(年齢が最大のリスク因子)
・高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満(生活習慣病)
・運動不足・社会的孤立・うつ病
・難聴(中年期以降の難聴は認知症リスクと関連)
・喫煙・過度の飲酒

一方、適度な運動・バランスのとれた食事・社会参加・知的活動・高血圧の管理などが認知症リスクの低減に寄与する可能性が研究で示されています。ただし、これらは「予防の可能性を示すエビデンス」であり、特定の方法で認知症を確実に防げると断言できるものではありません。

家庭でできる対応・観察のポイント

認知症の方への介護は、本人が「安心できる環境」を整えることが基本です。

コミュニケーションの工夫
・ゆっくり、短い言葉で、一つずつ伝える
・否定・叱責を避け、本人の気持ちに寄り添う
・「さっき言ったでしょ」と責めると混乱が増すため、穏やかに繰り返す
生活環境の整備
・転倒予防(段差・カーペット・夜間の照明)
・服薬管理(ピルケースや服薬カレンダーの活用)
・外出時の迷子防止(GPS端末・連絡先記載の名札)
記録と観察

日常の変化を記録しておくことで、受診時に医師やケアマネジャーへ正確な情報を伝えられます。「いつから」「どのような状況で」「どのくらいの頻度で」起きているかをメモしておきましょう。

なお、認知症高齢者の日常生活自立度は、介護の必要度を客観的に把握するための指標として、ケアプランや介護保険申請にも活用されています。

受診・相談の目安(危険なサイン)

以下のような状況が見られる場合は、速やかに医師・かかりつけ医・地域包括支援センターへの相談をお勧めします。受診を焦る必要はありませんが、早期に専門的な評価を受けることで、適切なケアや治療方針を立てやすくなります。

・急激な意識・行動の変化(数時間〜数日で症状が悪化した場合は、せん妄や急性疾患の可能性もあります)
・食事をとらない、水分を摂れない状態が続く
・自傷・他害の危険がある
・徘徊による行方不明リスクが高まった
・服薬管理が難しくなり、慢性疾患の治療が継続できない
・介護者の心身の限界
「急に様子がおかしくなった」場合は認知症の急激な悪化ではなく、せん妄である可能性もあります。せん妄と認知症の違いについては、「せん妄とは?認知症との違い・原因・対応法を解説」をご参照ください。

訪問診療・在宅医療を利用することで、外来受診が難しい方でも自宅で専門的な診察を受けられます。ご不安な点は、在宅医療のご相談・お問い合わせからお気軽にご連絡ください。

関連キーワード補足
アルツハイマー型認知症

認知症の中で最も多い種類です。アミロイドβやタウタンパクの蓄積によって神経細胞が障害され、記憶障害を中心に、徐々に日常生活全般が困難になっていきます。進行は比較的緩やかで数年〜10年以上にわたることが多いとされています。詳しくは「アルツハイマー型認知症の症状・進行・寿命を解説」をご覧ください。

レビー小体型認知症

αシヌクレインというタンパク質が脳内に蓄積することで発症します。リアルな幻視(小さな子どもや虫が見えるなど)、認知機能の日内変動、パーキンソン症状(歩行の不安定さ・手の震えなど)が特徴です。薬剤への過敏性があるため、服薬管理には特に注意が必要です。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)

医療機関やかかりつけ医が広く使用する認知機能のスクリーニング検査です。年齢・日時・場所の見当識、単語の即時・遅延再生、計算などの9項目、30点満点で評価します。20点以下が認知症疑いの目安ですが、スクリーニングツールであり診断確定には医師による総合的な評価が必要です。

認知症介護基礎研修

介護保険施設・事業所で認知症の方の介護に従事するすべての職員を対象とした研修制度です(2021年度より義務化)。認知症の基本的理解と本人視点のケアを学ぶ内容で、ケアマネジャーをはじめ現場スタッフの知識底上げを目的としています。

あざみ野の訪問診療によるサポート(CTA)

メディカルクリニックあざみ野では、認知症が疑われる方・すでに診断を受けた方とそのご家族を、訪問診療・在宅医療で継続的にサポートしています。

・自宅での認知機能評価・療養計画の立案
・服薬管理の支援(多剤服用・副作用リスクの評価)
・BPSDへの対応アドバイス
・介護保険サービス・地域資源との連携
・看取り・緩和ケアを含む生活支援

通院が難しい方、家族だけでは対応に不安を感じている方は、どうぞお気軽にご相談ください。

在宅医療のご相談・お問い合わせ

TEL: 045-978-0455

よくある質問(FAQ)
Q1. 認知症と物忘れはどう違いますか?
加齢による物忘れは「ヒントがあれば思い出せる」「体験の一部を忘れる」のが特徴です。認知症による記憶障害は「体験そのものを忘れる」「ヒントを与えても思い出せない」ことが多く、日常生活への支障が生じます。気になる変化があれば、かかりつけ医に相談することをお勧めします。
Q2. 何科を受診すればよいですか?
まずはかかりつけ医(内科・総合診療科)に相談するのが最初のステップです。必要に応じて、神経内科・精神科・老年内科・物忘れ外来などを紹介してもらえます。かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターへの相談も有効です。
Q3. 認知症は治りますか?
アルツハイマー型・レビー小体型などの変性性認知症は、現時点では根本的な治療法はなく、進行を遅らせたり症状を和らげたりすることを目標とした治療が行われています。一方、正常圧水頭症・慢性硬膜下血腫・甲状腺機能低下症などが原因の場合は、治療によって改善が期待できることがあります。
Q4. 家族が認知症かもしれないと思ったら、まず何をすればよいですか?
日常の変化(いつから・どんな状況で・どの程度)をメモしておき、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談することをお勧めします。本人が受診を嫌がる場合は、「検診のついでに」など自然な形で促す工夫が有効です。訪問診療を利用することで、外出が難しい方でも自宅での評価が可能です。
Q5. 認知症の介護で気をつけることは何ですか?
「否定しない」「急かさない」「環境を整える」の3点が基本です。また、介護者自身の心身の疲弊にも注意が必要です。一人で抱え込まず、デイサービス・ショートステイ・訪問介護などの介護保険サービスを活用し、ケアマネジャーや医師と定期的に情報を共有することが大切です。
本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)

医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 理事長

専門領域:消化器外科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全

略歴

1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター(外科医長・救命救急センター副部長)、済生会若草病院(外科部長・内視鏡センター・診療部長)を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院 副理事長、日立おおみか病院 理事を経て現在に至る。

公的役割

厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員 / 全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー / 神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役

メディカルクリニックあざみ野 在宅医療のご案内

メディカルクリニックあざみ野では、在宅医療・訪問診療をはじめ、高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全など、ご自宅での療養に関するさまざまなご相談に対応しています。「通院が難しくなってきた」「認知症の家族への対応が不安」など、どのような内容でもお気軽にご相談ください。

在宅医療のご相談・お問い合わせ

TEL:045-978-0455

ご相談の際は、以下の書類等をご用意いただくとスムーズです。

・薬剤情報提供書またはお薬手帳の写し
・医療保険証・公費証明書・各種受給者証の写し
・介護保険証・介護保険負担割合証の写し
・限度額適用認定証等の写し
・印鑑

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