パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質「ドパミン」が減少することで、手のふるえや体のこわばりといった運動症状があらわれる、慢性的な神経変性疾患です。65歳以上では約100人に1人、75歳以上では約50人に1人がかかるとされ(厚生労働省「難病情報センター」より)、高齢者に多い疾患のひとつです。適切な医療と在宅でのケアを組み合わせることで、症状をコントロールしながら生活の質(QOL)を維持することが期待できます。
本記事は、在宅医療・高齢者医療に精通した消化器外科専門医(医学博士)佐藤靖郎医師の監修のもと、医学的根拠にもとづいて執筆しています。診断・治療は必ず医師の診察を受けたうえで行ってください。
パーキンソン病は、脳の「黒質(こくしつ)」と呼ばれる部位にある神経細胞が徐々に減少し、運動を調節する神経伝達物質「ドパミン」が慢性的に不足することで発症する疾患です。1817年にジェームズ・パーキンソンが初めて報告して以来、現在も世界中で研究が進められています。
国の指定難病(指定難病6番)に分類されており、厚生労働省の推計では日本国内の患者数は約15〜20万人とされています。発症は50歳以上に多く、年齢が上がるにつれて発症リスクが高まります。根本的な治癒には至っていませんが、薬物療法やリハビリテーション、外科的治療など、症状を和らげるための治療法が確立されています。
- 自律神経症状:便秘、頻尿、発汗過多、起立性低血圧
- 精神・認知症状:抑うつ、無気力、認知機能の低下
- 睡眠障害:レム睡眠行動障害(睡眠中に大声を上げたり体を動かす)
- 感覚症状:嗅覚の低下(においがわかりにくくなる)、痛み
初期段階では、以下のような症状が先行することがあります。医療機関への受診のきっかけとして、ぜひ参考にしてください。
- においがわかりにくくなった(嗅覚低下は発症の数年前からあらわれることも)
- 寝ているときに大声を出したり、暴れるような動作をする
- 長年の便秘が急に悪化した
- 字が小さくなった(小字症)、筆圧が弱くなった
- 表情が乏しく、笑顔が減ったと家族から指摘される
- 片腕の振りが小さくなった(歩行時)
これらは単独では別の原因によることも多いですが、複数重なる場合や徐々に進行する場合は、専門医への相談を検討してください。
パーキンソン病の根本的な原因はまだ完全には解明されていません。現在の研究では、以下の要因が複合的に関与していると考えられています。
- 遺伝的要因:一部の患者では特定の遺伝子変異が確認されています(家族性パーキンソン病)。ただし、遺伝子変異があれば必ず発症するわけではありません。
- 環境的要因:農薬(除草剤・殺虫剤)への長期曝露との関連が指摘されています。
- 加齢:神経細胞の自然な減少が発症リスクを高めると考えられています。
- 酸化ストレス・炎症:脳内での酸化ストレスや慢性炎症が神経細胞の障害を促進するとされています。
大多数(約90%)は遺伝が直接の原因ではない「孤発性(散発性)パーキンソン病」です。
「パーキンソン病 なりやすい性格」という検索も多く見られますが、医学的には性格と発症の直接的な因果関係は証明されていません。ただし、一部の研究では「真面目・几帳面・内向的」といった性格傾向のある方に多いとの報告もあり、ストレスや自律神経系との関連が検討されています。あくまで参考程度にとどめ、性格だけで判断することは避けましょう。
なお、喫煙者や多量のコーヒー摂取者では発症リスクが低いという疫学データもありますが、「だから喫煙・過剰摂取が予防になる」という結論にはなっていません。
転倒はパーキンソン病患者さんの大きなリスクです。在宅での環境整備が重要になります。
- 室内の段差をなくす、滑り止めマットの設置
- 手すりの設置(廊下・トイレ・浴室・玄関)
- 夜間のトイレ歩行に備えた足元灯の設置
- すくみ足(歩き出せない状態)には「床にテープで線を引く」「声かけでリズムをとる」などの工夫が有効なことがあります
パーキンソン病と食べてはいけないものについては、薬の吸収への影響が特に重要です。
- L-ドパ製剤(レボドパ)服用中の方:高タンパク食(肉・魚・大豆製品など)と薬を同時に摂ると薬の吸収が低下することがあります。主治医や薬剤師に服薬タイミングの確認を。
- MAO-B阻害薬服用中の方:チラミンを多く含む食品(チーズ・赤ワイン・発酵食品など)との相互作用が指摘されることがあります。服用薬の種類によって注意事項が異なるため、必ず担当医に確認してください。
- 嚥下(えんげ)機能の低下が進んだ場合は、食事形態の調整(とろみづけ等)が必要になることがあります。
パーキンソン病の薬は「飲む時間・量・種類」が非常に重要です。
- 飲み忘れ・飲み間違えを防ぐためにピルケース・お薬カレンダーを活用する
- 薬の急な自己中断は症状の急激な悪化(悪性症候群)につながる可能性があるため、絶対に自己判断で中止しない
- 定期的な薬の見直しのため、処方医との連携を維持する
介護するご家族は、以下の点を日常的に観察・記録しておくと、受診時に役立ちます。
- 薬を飲んだ後に症状が楽になる時間帯(ON時間)と動きにくい時間帯(OFF時間)
- 転倒の有無と状況
- 睡眠の状態(夜間の大声・体動)
- 食事摂取量と嚥下の様子
- 排便の状況
以下のような変化がみられたときは、早めに医療機関または担当医・ケアマネジャーへ相談することをおすすめします。
- 急に体の動きが悪くなった、高熱がある(悪性症候群の可能性)
- 薬を飲んでも効果が感じられなくなった
- 飲み込みが悪くなり、誤嚥が増えた
- 幻視・幻覚(実際にいない人・虫が見えるなど)があらわれた
- 繰り返す転倒、特に頭部を打った場合
- 抑うつ・無気力が強まり、食事も取れない状態が続く
いずれも「様子を見ればよくなるだろう」と判断が難しい症状です。在宅での対応に不安がある場合は、訪問診療や在宅医療の活用もご検討ください。
在宅医療のご相談・お問い合わせからお気軽にお問い合わせいただけます。
「パーキンソン病 寿命」は多くのご家族が気にされる点です。現在の医療では、適切な治療を受けた場合、パーキンソン病そのものが直接的に寿命を大きく縮めることは少ないとされています。ただし、誤嚥性肺炎・転倒による骨折・感染症などの合併症が生命予後に大きく影響します。早期からリハビリテーションと感染症予防(特に肺炎球菌・インフルエンザワクチン接種)に取り組むことが重要です。予後については個人差が大きいため、担当医と丁寧に相談されることをおすすめします。
また、パーキンソン病に似た症状をきたす「パーキンソン症候群(進行性核上性麻痺・多系統萎縮症など)」も存在し、それぞれ経過が異なります。正確な診断には神経内科専門医による評価が必要です。
フレイルとは?チェック方法・予防・要介護との関係では、パーキンソン病との関連が深い「身体機能の低下・フレイル」についても詳しく解説しています。
メディカルクリニックあざみ野では、パーキンソン病をはじめとする神経疾患を抱える高齢者の方への訪問診療・在宅医療を行っています。
- 定期的な自宅への往診で、薬の効果・副作用の確認
- 嚥下状態や栄養状態の評価
- ケアマネジャー・訪問看護師・リハビリテーション専門職との多職種連携
- 急変時の対応・入院調整のサポート
「最近、動きが悪くなってきた」「薬の管理が難しい」「在宅でどこまで対応できるか不安」といったご相談も承っています。
TEL:045-978-0455
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 理事長
専門:消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員/全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー/神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
在宅医療・訪問診療、高齢者医療やがん緩和ケア、心不全・呼吸不全の療養について、気になることがあればお気軽にご相談ください。
パーキンソン病をはじめとする慢性疾患の在宅管理、療養中の生活上の不安など、どのようなご相談でもお受けしています。
TEL:045-978-0455
ご相談の際は、以下の書類等をご用意いただくとスムーズです。
- 薬剤情報提供書またはお薬手帳の写し
- 医療保険証・公費証明書・各種受給者証の写し
- 介護保険証・介護保険負担割合証の写し
- 限度額適用認定証等の写し
- 印鑑
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