自宅での入浴が困難な方でも、専門スタッフが浴槽を持参して入浴を支援してくれるのが「訪問入浴介護」です。介護保険の給付対象であり、要介護認定を受けた方が主な利用対象となります。本記事では、訪問入浴介護の仕組み・費用・利用手順を、介護をされるご家族やケアマネジャーの方に向けてわかりやすく解説します。
本記事は医学的知見に基づく情報提供を目的としており、個別の診断・治療方針については必ず担当医師や医療・介護専門職にご相談ください。
まず、在宅医療全体の仕組みについては 訪問診療・在宅医療 完全ガイド|あざみ野の在宅医療 もあわせてご覧ください。
訪問入浴とは?
訪問入浴介護とは、入浴が自力では困難な要介護者の自宅に、専用の浴槽(ポータブル浴槽)を持ち込み、看護職員1名と介護職員2名の計3名が原則1チームとなって入浴介助を行う介護保険サービスです(介護保険法 第8条第3項)。
通常、浴室の構造や本人の身体状況から、一般的な家庭での入浴が困難なケースに適用されます。入浴は清潔保持にとどまらず、血液循環の促進・関節可動域の維持・精神的なリラクゼーションなど、身体的・心理的ケアとして重要な役割を持ちます。訪問入浴介護はそうした生活の質(QOL)を在宅で維持・向上させる手段のひとつです。
- 要介護1〜5の認定を受けている方
- 寝たきりや重度の運動機能障害により、自宅浴室での入浴が困難な方
- 病状が安定しており、主治医が入浴を許可している方
※要支援1・2の方は「介護予防訪問入浴介護」として利用可能な場合があります。利用可否はケアマネジャーにご確認ください。
費用の内訳と相場
訪問入浴介護の費用は介護保険が適用されるため、利用者の自己負担割合(1〜3割) に応じた額を支払います。介護保険の自己負担割合は所得に応じて異なります(厚生労働省「介護保険制度の概要」)。
初期費用・月額の目安
1回あたりの介護報酬(2024年度介護報酬改定準拠)
※1単位あたり10〜11.4円(地域・事業所区分により異なる)。上表は1単位=10円で算出した概算です。実際の費用は事業所が所在する地域の単価によって変動します。
※部分浴(清拭・手浴・足浴のみ)の場合は減算があります。
- 訪問入浴介護に使用する消耗品(石鹸・タオル類)は事業所によって費用に含まれる場合と別途請求される場合があります。利用前に事業所へご確認ください。
- 初期費用(入会金・登録料)を設定している事業所もあります。
費用を抑える制度・軽減措置
❶ 介護保険の区分支給限度基準額内での利用
介護保険には要介護度ごとに1か月あたりの利用限度額(区分支給限度基準額)が設定されており、その範囲内であれば保険給付が適用されます。ケアプランを担当のケアマネジャーと相談し、他のサービスとのバランスを取ることが大切です。
❷ 高額介護サービス費制度
同一月の介護保険自己負担額が一定の上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。収入に応じた上限額が設定されており、市区町村の窓口で申請できます(介護保険法第51条)。
❸ 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
社会福祉法人等が運営する事業所では、低所得者を対象に自己負担額をさらに軽減する制度があります。
❹ 医療保険との併用
訪問入浴介護は介護保険サービスですが、訪問看護や居宅療養管理指導などの医療系サービスと組み合わせることで、より総合的な在宅ケアが可能です。詳しくは居宅療養管理指導とは?対象・費用・訪問診療との関係もご参照ください。
費用シミュレーション例
例:要介護3・自己負担1割の方が月4回利用した場合
- 1回あたり自己負担:約1,270円
- 月4回利用:約5,080円/月
さらに訪問看護・訪問介護などを組み合わせても、区分支給限度基準額(要介護3:27,048単位)の範囲内であれば保険給付が継続されます。
※あくまで目安です。実際の費用は地域の単価・事業所の設定・ケアプランの内容によって異なります。
申請・利用開始までの流れ
- 要介護認定の申請
まだ認定を受けていない場合は、住まいの市区町村窓口または地域包括支援センターへ申請します。 - ケアマネジャーへの相談・ケアプラン作成
要介護認定後、担当ケアマネジャーに訪問入浴介護の利用を相談します。他のサービスとのバランスを考慮したケアプランが作成されます。 - 主治医への確認(医師の許可)
心疾患・皮膚疾患・感染症など、入浴に注意が必要な状態がある場合は主治医の意見が重要です。主治医が訪問診療を行っている場合は連携がスムーズです。 - 事業所との契約・サービス開始
ケアプランに基づき、訪問入浴介護事業所と契約を結びます。初回訪問時に身体状況を確認し、安全に入浴できる環境を整えます。
訪問診療と訪問入浴介護を組み合わせることで、在宅での療養生活をより安全に維持しやすくなります。訪問診療の全体像については訪問診療・在宅医療 完全ガイド|あざみ野の在宅医療をご覧ください。
関連キーワード補足:訪問入浴介護/訪問入浴とは/訪問看護/訪問介護
訪問入浴介護は介護保険法に定められた居宅サービスのひとつで、「訪問入浴」とも略称されます。「訪問看護」や「訪問介護」と混同されることがありますが、それぞれ異なるサービスです。
訪問看護とは?サービス内容・費用・利用の流れを解説では、訪問看護との違いや具体的なサービス内容をさらに詳しく説明しています。また、訪問介護(ホームヘルプ)とは?内容・料金・訪問看護との違いも合わせてご参照いただくと、各サービスの役割の違いをご理解いただきやすくなります。
あざみ野の訪問診療によるサポート
メディカルクリニックあざみ野では、横浜市青葉区を中心に訪問診療を行っています。訪問入浴介護をはじめとした在宅サービスの導入に際しては、主治医による病状評価・入浴可否の判断・ケアマネジャーや訪問看護との多職種連携が重要です。
当院では、がん緩和ケア・心不全・呼吸不全など医療ニーズの高い方の在宅療養も支援しています。「訪問入浴を利用したいが、医師の判断が必要かどうかわからない」「ケアプランの相談先を探している」といった場合も、まずはお気軽にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 訪問入浴介護は要支援でも使えますか?
A. 要支援1・2の方は「介護予防訪問入浴介護」として利用できる場合があります。ただし介護保険の給付対象かどうかは市区町村や担当ケアマネジャーへご確認ください。
Q2. 主治医の許可は必ず必要ですか?
A. 法令上、主治医の指示書が義務づけられているわけではありませんが、心疾患・皮膚疾患・術後の創部などがある場合は入浴の可否について主治医に相談することが安全です。訪問入浴介護事業所も利用前に健康状態を確認します。
Q3. 自宅の浴室が狭くても利用できますか?
A. ポータブル浴槽を持ち込むため、自宅の浴室を使用しません。ただし浴槽の設置スペース(目安:畳1畳程度)が確保できることが必要です。事業所によって機材のサイズが異なるため、事前に確認しましょう。
Q4. 訪問入浴のスタッフは何人来ますか?
A. 原則として看護職員1名・介護職員2名の計3名が1チームで訪問します。利用者の状態が安定している場合、介護職員2名のみで実施できるケース(准看護師等の代替要件あり)もあります。
Q5. 感染症がある場合も利用できますか?
A. 感染症の種類・状態によって利用可否が異なります。主治医および訪問入浴介護事業所に相談の上、安全性を確認してから利用することが望ましいです。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 院長
専門: 消化器外科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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- 薬剤情報提供書またはお薬手帳の写し
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- 介護保険証・介護保険負担割合証の写し
- 限度額適用認定証等の写し
- 印鑑