在宅での看取りとは?流れ・家族の心構え・医師の役割
自宅で最期を迎えたい——そう希望する高齢者や患者さんは少なくありません。「看取り」とは、回復が見込めない状態になった方の自然な死を、医療・介護・家族が連携して支えるプロセスのことです。特別な処置で延命を図るのではなく、本人の意思と尊厳を尊重しながら、穏やかな最期を迎えられるよう寄り添うことが、看取りの本質といえます。
本記事では、在宅での看取りの定義・流れ・準備すべき書類・家族の心構え・医師の役割を、医学的根拠をもとにわかりやすく解説します。なお、実際の看取りに関する判断は必ず担当医師との相談のうえで行ってください。
看取りとは?
看取り(みとり)とは、治癒を目的とした治療をおこなわず、残された時間を本人らしく過ごせるよう身体的・精神的・社会的に支える一連のケアを指します。
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(2018年改定)」では、本人の意思を最大限尊重し、医療・ケアチームと家族が十分に話し合うことを基本方針として示しています。
「看取り=死を待つこと」ではなく、「その人らしい最期を実現するための積極的な支援」と理解していただくと、家族の心理的な負担も和らぎやすくなります。
対象となる人・条件
在宅での看取りの対象となる主なケースは以下のとおりです。
- がんの末期:積極的な抗がん治療をこれ以上おこなわないと判断された方
- 心不全・呼吸不全の末期:病状が進行し、入退院を繰り返している方
- 認知症の重度進行例:嚥下機能が低下し、経口摂取が困難になった方
- 老衰:加齢により全身機能が緩やかに低下している方
いずれも「本人または家族が在宅での看取りを希望している」「訪問診療・訪問看護など在宅医療体制が整っている」ことが前提条件となります。
手順・やり方(ステップ解説)
在宅看取りは、大きく次の4段階で進みます。
ステップ1:意思確認と多職種カンファレンス
本人・家族・主治医・ケアマネジャー・訪問看護師などが集まり、今後の医療・ケアの方針を話し合います。「人生の最終段階」に向けた意思決定支援(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)として、希望する療養場所・延命治療への意向を文書化しておくことが推奨されています。
ステップ2:訪問診療・訪問看護の開始
在宅主治医が定期的に自宅を訪問し、症状緩和(痛み・呼吸困難など)を中心とした医療的管理をおこないます。訪問看護師は身体ケア・家族への指導・精神的サポートを担います。
ステップ3:看取り期の対応
呼吸や意識の変化(傾眠傾向が深まる、下顎呼吸が始まるなど)が見られたら、在宅医・訪問看護師に速やかに連絡します。多くの場合、数時間〜数日以内に臨終を迎えます。家族は「そばにいること」が最大のケアになります。
ステップ4:臨終後の対応
在宅主治医が自宅を訪問し、死亡確認をおこなったうえで死亡診断書を発行します。救急車や警察を呼ぶ必要はなく、訪問診療を受けていれば主治医が対応します。その後、葬儀社への連絡など次のステップに進みます。
必要な書類・準備
| 書類・準備物 | 内容・目的 |
|---|---|
| 訪問診療の契約書 | 在宅医との診療契約 |
| 看取り同意書 | 延命処置をおこなわない旨の家族の同意 |
| 意思表示書(ACP関連) | 本人の希望を記録したもの |
| 訪問看護指示書 | 主治医から訪問看護師への指示書 |
| 緊急連絡先リスト | 訪問診療・訪問看護・ケアマネジャーの連絡先 |
| お薬手帳・薬剤情報提供書 | 服薬管理・緊急時の医師への情報提供 |
| 介護保険証・医療保険証 | サービス利用・費用請求のために必要 |
注意点・よくある失敗
①「急変時に119番を呼んでしまう」
在宅看取りを希望していても、いざとなると家族が救急車を呼んでしまうケースがあります。事前に「緊急時は在宅医へ連絡する」という流れを家族全員で共有しておきましょう。
②「家族間で方針がまとまっていない」
遠方に住む兄弟・親族が急に「病院へ連れて行くべき」と主張するトラブルは少なくありません。事前にACPの内容を家族全員で共有・合意しておくことが重要です。
③「介護負担が一人に集中する」
在宅看取りでは家族介護者の疲弊が大きな課題です。訪問介護・短期入所(ショートステイ)・訪問入浴などを組み合わせ、負担を分散させましょう。
④「症状緩和が不十分になる」
痛みや呼吸困難の緩和が不十分なまま経過すると、本人・家族ともに苦しい時間が続きます。在宅医への報告を遅らせず、早め早めに相談することが大切です。
困ったときの相談先
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 在宅主治医(訪問診療医) | 医療的判断・症状緩和・死亡診断書の発行 |
| 訪問看護師 | 身体ケア・家族への看取り指導・24時間対応 |
| ケアマネジャー | 介護サービスの調整・関係機関との連絡 |
| 地域包括支援センター | 地域の在宅医療・介護サービスの紹介 |
| 医療ソーシャルワーカー(MSW) | 在宅移行の相談・費用の助言 |
まずはかかりつけの在宅医やケアマネジャーに相談することが、最善の入口となります。在宅医療について詳しくお知りになりたい方は、在宅医療のご相談・お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
関連キーワード補足:看取り介護とは/看取りケア/ホスピス
看取り介護とは・看取りケア
看取り介護とは、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護施設において、人生の最終段階を迎えた入居者に対し、身体的ケア・精神的支援・家族への寄り添いをおこなうことを指します。介護保険制度では「看取り介護加算」として評価されており、施設での看取り体制整備が進んでいます。
看取りケアはより広い概念で、在宅・施設・病院いずれの場においても、「その人らしい最期」を実現するためのトータルなケアを意味します。身体ケアにとどまらず、スピリチュアルケア(人生の意味・死への不安への対応)も含まれます。
ホスピスとは
ホスピスとは、治癒を目的とした治療をおこなわず、緩和ケアを専門に提供する施設・病棟のことです。日本では「緩和ケア病棟」として保険診療の対象となっています。在宅での看取りが難しい場合や、専門的な症状緩和が必要な場合に選択肢のひとつとなります。詳しくはホスピスとは?緩和ケア病棟との違い・費用・入院の流れをご参照ください。
また、終末期ケア全般の考え方についてはターミナルケア(終末期ケア)とは?在宅での看取りもあわせてご覧ください。
あざみ野の訪問診療によるサポート(CTA)
メディカルクリニックあざみ野では、横浜市青葉区を中心に訪問診療をおこなっており、がん末期・心不全・呼吸不全・老衰など、さまざまな疾患の在宅看取りを支援しています。
- 24時間365日の緊急対応体制
- 疼痛・呼吸困難などの症状緩和(緩和ケア)
- 家族への看取り指導・精神的サポート
- 多職種(訪問看護・ケアマネジャー・薬剤師)との連携
「在宅で最期を迎えたい」「どこに相談すればいいかわからない」という方は、まずお気軽にご連絡ください。
在宅医療のご相談・お問い合わせ
TEL:045-978-0455
よくある質問(FAQ)
Q1. 在宅看取りを選んだ場合、途中で病院に変更できますか?
A. はい、可能です。在宅看取りの方針はいつでも変更できます。症状が急変して在宅での対応が難しくなった場合や、家族の希望が変わった場合は、在宅主治医に相談すれば入院への移行を調整します。
Q2. 夜間や休日に容態が急変した場合はどうすればよいですか?
A. 訪問診療を受けている場合、在宅医療クリニックが24時間365日の緊急連絡体制を整えているのが一般的です。事前に緊急時の連絡先を確認し、家族全員で共有しておくことが重要です。
Q3. 看取りを自宅でおこなうと、費用はどのくらいかかりますか?
A. 訪問診療は医療保険(在宅患者訪問診療料など)が適用されます。介護サービスは介護保険が適用され、自己負担割合は所得により異なります。高額療養費制度や限度額適用認定証の利用により、自己負担を軽減できる場合があります。詳しくは担当のケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーにご相談ください。
Q4. 死亡診断書は誰が書くのですか?救急車を呼ぶ必要はありますか?
A. 訪問診療を受けている場合、担当の在宅医が自宅を訪問して死亡確認をおこない、死亡診断書を発行します。在宅看取りでは原則として救急車や警察を呼ぶ必要はありません。
Q5. 傾眠が強くなってきました。看取りが近いサインですか?
A. 傾眠傾向(眠りがちになる状態)は、終末期に近づいたときに見られることがある変化のひとつです。ただし、傾眠の原因は薬の影響・脱水・感染症などさまざまな場合もあるため、気になる変化があれば在宅主治医や訪問看護師にご連絡ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 院長
専門:消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。