ホスピスとは?緩和ケア病棟との違い・費用・入院の流れ
終末期を穏やかに過ごすための場所「ホスピス」について、費用・入院の流れ・制度をわかりやすく解説します。
「ホスピスに入ってほしいと言われたけれど、どんな場所なのか分からない」「緩和ケア病棟とは違うの?」——そのような疑問を抱える家族やケアマネジャーの方に向けて、定義・費用・申請の流れを医学的根拠に基づいて整理しました。なお、個々の医療方針については必ず担当医師に相談のうえでご判断ください。
本記事は、看取り・終末期ケアに関する総合解説ページ「看取り・終末期ケアのすべて|在宅での看取り」のクラスター記事です。
ホスピスとは?
ホスピス(hospice)とは、治癒を目的とした治療ではなく、痛みや苦しみの緩和を中心に置き、患者本人とその家族の生活の質(QOL)を支えるケアを提供する場・理念の総称です。
もとはキリスト教の巡礼者を受け入れた宿泊施設に由来し、20世紀後半にイギリスの看護師シシリー・ソンダーズが現代的なホスピスの概念を確立しました。日本では1981年に聖隷三方原病院(静岡県)に初めてホスピス病棟が開設されています。
緩和ケア病棟との関係
日本の医療制度上、ホスピスと緩和ケア病棟はほぼ同義として使われることが多いです。厚生労働省の診療報酬上は「緩和ケア病棟入院料」として定義されており、がんや後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者を対象に、身体的・精神的苦痛の緩和を専門に行う病棟のことを指します。一般に「ホスピス」は理念・施設名称として用いられ、「緩和ケア病棟」は制度上の名称です。
主なケアの内容は以下のとおりです。
- 疼痛コントロール:医療用麻薬などを用いた痛みの管理
- 精神・心理的サポート:不安・抑うつへの対応、スピリチュアルケア
- 家族ケア:家族への情報提供、グリーフ(悲嘆)ケア
- 生活環境の整備:個室・家族控室の確保、外泊・面会の柔軟な対応
終末期にみられる傾眠(けいみん)——日中でも眠り続ける状態——なども、ホスピスでは症状の一つとして丁寧に評価・対応されます。傾眠傾向の詳細は「傾眠傾向とは?高齢者に見られる原因と受診の目安」をあわせてご覧ください。
費用の内訳と相場
初期費用/月額の目安
緩和ケア病棟(ホスピス)に入院した場合、費用は大きく「入院基本料(包括点数)」と「自己負担の実費」に分かれます。
| 費用項目 | 概要 |
|---|---|
| 入院基本料 | 診療報酬の包括評価(緩和ケア病棟入院料)が適用。1日あたり5,000〜7,000円程度の自己負担(3割)が目安 |
| 食費・居住費 | 1日あたり1,000〜2,000円程度(低所得者は減額あり) |
| 個室料(差額ベッド代) | 施設により0円〜数万円/日と大きく異なる |
| 雑費(日用品など) | 実費 |
月額の目安:15万〜35万円程度(自己負担割合・個室選択の有無・施設によって大きく変わります)。
※ 上記はあくまで参考値です。施設ごとに費用体系が異なるため、入院前に必ず施設のソーシャルワーカーに確認してください。
費用を抑える制度・軽減措置
医療費の自己負担が一定額を超えた場合、払い戻しを受けられる高額療養費制度が利用できます。所得区分に応じて自己負担の上限額が設定されており、長期入院でも上限を超えた分は申請により返還されます。
| 主な軽減制度 | 概要 |
|---|---|
| 高額療養費制度 | 月間の医療費自己負担に上限を設定(所得区分別) |
| 限度額適用認定証 | 事前に申請すると窓口支払いが自己負担限度額までになる |
| 高額介護合算療養費 | 医療保険+介護保険の合算上限を超えた場合に払い戻し |
| 生活保護・低所得者減額 | 食事療養費の標準負担額が減額 |
これらの手続きは、かかりつけ医・病院のソーシャルワーカー・ケアマネジャーが連携してサポートすることが一般的です。
費用シミュレーション例
【例】70代・がん末期、月収28万円(標準報酬月額26万円相当)の場合
- 高額療養費の自己負担上限(区分ウ):月額約57,600円
- 食費・居住費(一般病棟の場合):約30,000〜60,000円
- 差額ベッド代(個室・病院平均約6,000円/日):約180,000円
- 合計の目安:月額87,600〜297,600円程度
個室代をゼロ(大部屋)にすれば費用は大幅に抑えられます。なお、限度額適用認定証を事前に取得しておくと窓口での支払いが軽減されます。
申請・利用開始までの流れ
- 主治医・担当科への相談 まず現在の治療担当医に「ホスピス・緩和ケア病棟への転院を希望したい」と伝えます。
- ソーシャルワーカーへの連携 病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)が施設の候補を提示し、家族の希望を整理します。
- 施設見学・面談 候補の緩和ケア病棟に問い合わせ、見学・家族面談を行います。待機期間がある場合も多いため、早めの行動が望まれます。
- 入院前カンファレンス 現在の主治医と転院先の医師が情報を共有。紹介状・画像・薬剤情報などが引き継がれます。
- 入院・ケアプランの調整 入院後、患者・家族の希望を踏まえたケアプランが作成されます。
終末期ケア全体の流れについては「ターミナルケア(終末期ケア)とは?在宅での看取り」も参照してください。
関連キーワード補足
ホスピスとは
「ホスピス」は施設の固有名称ではなく、終末期の緩和ケアを提供する場・理念を指す言葉です。日本では「緩和ケア病棟」が制度的な名称として用いられ、厚生労働省が定める基準を満たした病棟が届出を行っています(2024年時点で全国約500施設超)。
ファミリーホスピス
ファミリーホスピスは、株式会社ファミリーが運営する居宅型のホスピスサービス(住宅型有料老人ホーム)のブランド名です。施設内で医療的ケアと介護サービスを組み合わせて提供する形態であり、病院の緩和ケア病棟とは制度・費用体系が異なります。
ホスピス 費用
前述のとおり、入院にかかる月額費用の目安は15万〜35万円程度ですが、施設の種別・個室使用・所得区分により大きく変動します。公的制度(高額療養費制度など)を活用することで自己負担を軽減できる場合があります。
ホスピス型有料老人ホーム
医療的な緩和ケアと介護サービスを一体的に提供する有料老人ホームを指す俗称です。介護保険施設のため、医療保険上の「緩和ケア病棟」とは制度が異なります。入居を検討する場合は、どのような医療提供体制があるか(協力医療機関・訪問診療の有無など)を事前に確認することが重要です。
セレニティホスピス東戸塚のような施設名を見かけた場合も、病院附属の緩和ケア病棟なのか、有料老人ホームベースの施設なのかを区別して確認してください。
あざみ野の訪問診療によるサポート
「ホスピスへの入院を待つ間、自宅でどう過ごせばよいか」「在宅でも緩和ケアを続けたい」——そのようなご相談を、メディカルクリニックあざみ野では訪問診療という形でお手伝いしています。
在宅でも痛みのコントロールや看取りに向けたケアは可能です。病院やケアマネジャーと連携しながら、患者さんとご家族の希望に沿ったサポートをご提案しています。
ご相談・お問い合わせは在宅医療のご相談・お問い合わせページをご利用いただくか、TEL 045-978-0455 までお気軽にご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ホスピスと病院の一般病棟では何が違うのですか?
A. 一般病棟は病気の治癒・延命を目的とした治療を中心に行います。一方、ホスピス(緩和ケア病棟)は治癒を目的とした治療を行わず、痛みや苦痛を和らげながら残りの時間の質を高めることを最優先とします。医師・看護師に加え、心理士・ソーシャルワーカー・チャプレンなど多職種がチームでケアにあたります。
Q2. 入院できる期間に制限はありますか?
A. 緩和ケア病棟入院料は、診療報酬上「60日以内」と「61日以降」で点数が異なりますが、入院が打ち切られるわけではありません。ただし施設によって運用方針が異なるため、入院前に確認することをお勧めします。
Q3. がん以外の病気でも入ることができますか?
A. 診療報酬上の緩和ケア病棟入院料の対象疾患はがんおよびAIDSですが、施設によっては心不全・呼吸不全などの非がん疾患にも対応している場合があります。まず施設のソーシャルワーカーや担当医にご相談ください。
Q4. 家族は面会・泊まり込みができますか?
A. ホスピス・緩和ケア病棟では面会時間の制限を緩和したり、家族が泊まれる部屋を設けたりしている施設が多くあります。具体的な対応は施設によって異なるため、見学の際に確認されることをお勧めします。
Q5. 在宅ホスピスという選択肢もありますか?
A. はい。訪問診療・訪問看護を利用することで、自宅でも緩和ケアを続けることが可能です。これを「在宅ホスピス」「在宅緩和ケア」と呼ぶことがあります。詳しくは「在宅での看取りとは?流れ・家族の心構え・医師の役割」をご覧ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 院長
専門:消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴:1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。