帯状疱疹は、適切な対処を怠ると重篤な合併症を引き起こすことがある感染症です。発症後に「してはいけないこと」を正しく把握しておくことが、早期回復と周囲への感染拡大防止につながります。本記事では、在宅で療養する高齢者とそのご家族が特に注意すべき点を、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。なお、個々の症状・治療方針については必ず医師にご相談ください。
本記事は高齢者に多い病気と症状 総合ガイドのクラスター記事です。
帯状疱疹で「してはいけないこと」は、大きく次の3つに整理できます。
- 皮疹(水疱)を触ったり、つぶしたりすること
- 入浴・温泉などで患部を強く温めすぎること
- 自己判断で受診や服薬を中断すること
これらを行うと、細菌の二次感染、症状の悪化、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれる長引く痛みのリスクが高まることが知られています。以下で詳しく説明します。
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因です。幼少期に水ぼうそうにかかった後、ウイルスは神経節に潜伏し続けます。加齢や疲労、免疫機能の低下をきっかけに再活性化し、神経に沿った帯状の発疹・水疱と強い痛みを引き起こします。
帯状疱疹には、以下のような重症化パターンがあります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 一般的な帯状疱疹 | 体の片側に帯状の皮疹・疼痛 |
| 眼部帯状疱疹 | 角膜炎・視力低下のリスクあり |
| ラムゼイ・ハント症候群 | 顔面神経麻痺・難聴を伴うことがある |
| 帯状疱疹後神経痛(PHN) | 皮疹治癒後も痛みが数カ月以上持続 |
高齢者ほど重症化・PHN移行のリスクが高いとされており、厚生労働省や日本皮膚科学会のガイドラインでも早期治療の重要性が強調されています。
- 水疱をつぶす・触る:細菌の二次感染(とびひ)を引き起こし、瘢痕(傷跡)が残るリスクが高まります。
- 患部を強くこする・刺激する:神経痛が悪化したり、皮疹の治癒が遅れたりします。
- 抗ウイルス薬を途中でやめる:ウイルスの増殖を十分に抑えられず、PHNに移行する可能性があります。発症後72時間以内の服薬開始が特に重要とされています。
- 免疫を著しく下げる行為(過労・飲酒・睡眠不足):回復を妨げる要因となります。
- 患部を冷やしすぎる・温めすぎる:急激な温度変化は疼痛を増悪させることがあります。入浴は医師の指示に従いましょう。
早期に抗ウイルス薬を服用し、患部を清潔に保ち、安静を維持することで、皮疹の改善が早まり、PHNへの移行リスクを下げることが期待できます。ただし、経過は個人差があるため、担当医との連携が不可欠です。
1. 感染拡大の予防
帯状疱疹は、水疱の中のウイルスが「水痘(水ぼうそう)未罹患・未接種の人」に感染する可能性があります。乳幼児・妊婦・免疫が低下した方(抗がん剤治療中、ステロイド長期服用中など)は特に注意が必要です。患部には直接触れず、使用したタオルや衣類は共用しないようにしましょう。
2. 服薬管理のサポート
抗ウイルス薬は決められた期間・用量を守ることが大切です。高齢者は飲み忘れが生じやすいため、服薬カレンダーや一包化調剤の活用が役立ちます。
3. 疼痛と睡眠の観察
帯状疱疹の痛みは夜間に強くなることがあり、睡眠障害につながる場合があります。「眠れていない」「食欲が落ちた」といった変化をこまめに確認し、必要に応じて医師に相談しましょう。
4. 基礎疾患の管理
高齢者の糖尿病|症状・合併症・在宅での管理にあるように、糖尿病があると免疫機能が低下し帯状疱疹が重症化しやすい傾向があります。血糖コントロールを含む基礎疾患の管理を並行して行うことが重要です。また、パーキンソン病とは?初期症状・進行・在宅での注意点で解説しているパーキンソン病のような神経疾患を持つ方も、症状の観察を丁寧に行う必要があります。
以下の症状・状況がみられる場合は、速やかに医師にご相談ください。
- 顔・目の周囲・耳の近くに皮疹が現れた
- 高熱が続く、または意識がもうろうとしている
- 皮疹が広範囲に広がっている、または1週間以上改善しない
- 激しい頭痛・めまい・聴力低下・顔面のしびれがある
- 皮疹が治まった後も強い痛みが続いている(PHNの可能性)
これらは重篤な合併症のサインである場合があります。「様子を見ようか」と迷った際には、訪問診療やかかりつけ医へ早めにご相談いただくことをお勧めします。
水疱が乾燥してかさぶた状になるまでは、感染性があります。とくに医療・介護・保育・食品関連の職場では、職場の感染管理上の方針と医師の指示に従い、出勤を控えることが望ましい場合があります。「帯状疱疹 出勤していいの」「帯状疱疹 仕事は休むべき」とお悩みの方は、主治医に就労可否の確認を行いましょう。
50歳以上の高齢者、免疫抑制剤・ステロイドの長期使用者、糖尿病・悪性腫瘍・血液疾患を持つ方、強いストレスや過労が続く方などが「帯状疱疹 なりやすい人」として挙げられます。日本人成人の約90%以上がVZVを保有していると推計されており、誰もが潜在的なリスクを持っています。ワクチン接種(帯状疱疹ワクチン)による予防についても、かかりつけ医にご相談ください。
医学的に「これを食べると帯状疱疹が確実に悪化する」と明確に禁じられた食品はありません。ただし、飲酒は免疫機能を低下させる可能性があるため、療養中は控えることが一般的に推奨されます。バランスの良い食事と十分な水分補給が基本です。極端な偏食は避け、主治医や管理栄養士に個別に相談することをお勧めします。
メディカルクリニックあざみ野では、帯状疱疹をはじめとする高齢者に多い疾患に対して、訪問診療・在宅医療のかたちでサポートを行っています。「病院への通院が難しい」「在宅での療養管理について相談したい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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Q1. 帯状疱疹の水疱は自然につぶれてもいいですか?
A. 自然に破れた場合は、清潔なガーゼで覆い、患部を清潔に保ってください。意図的につぶすことは細菌感染を招くリスクがあるため、避けてください。
Q2. 帯状疱疹のとき入浴はしてもいいですか?
A. 患部の状態と医師の指示によって異なります。一般的に、皮疹が軽度であれば短時間のシャワーは許可されることが多いですが、長時間の入浴や患部を強くこすることは避けてください。必ず主治医にご確認ください。
Q3. 帯状疱疹は人にうつりますか?
A. 帯状疱疹そのものは直接うつりませんが、水疱の内容物(ウイルス)が、水痘に未感染・未接種の方に接触すると「水ぼうそう」として発症する可能性があります。免疫が低下している方や乳幼児との接触は特に注意しましょう。
Q4. 帯状疱疹後神経痛(PHN)はどのくらい続きますか?
A. 個人差が大きく、数カ月から数年以上続く場合があります。早期の抗ウイルス薬治療がPHNへの移行リスクを下げる可能性があるとされています。皮疹が治癒した後も痛みが続く場合は、ペインクリニックや神経内科への相談も選択肢の一つです。
Q5. 帯状疱疹ワクチンは高齢者でも受けられますか?
A. 50歳以上を対象とした帯状疱疹ワクチン(生ワクチンおよびサブユニットワクチン)が国内で使用可能です。基礎疾患がある方は事前に医師と相談の上、接種の可否を確認してください。なお、免疫が著しく低下している方には接種できない場合があります。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 理事長
専門:消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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