サルコペニアとは?診断基準・予防・フレイルとの違い

在宅医療・介護のコラム

在宅医療・介護を知る

メディカルクリニックあざみ野

サルコペニアとは?診断基準・予防・フレイルとの違い

加齢や生活習慣によって骨格筋量・筋力が低下する「サルコペニア」は、転倒・骨折・要介護状態のリスクを高める重要な病態です。早期に気づき、適切な対策を講じることで、進行を緩やかにできる可能性があります。本記事では、定義・診断基準・フレイルとの違い・在宅での予防策を、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。なお、診断・治療の判断は必ず医師の診察のもとで行ってください。

サルコペニアとは?

「サルコペニア」は、ギリシャ語で「筋肉(sarx)」と「喪失(penia)」を組み合わせた言葉で、加齢などを主因として骨格筋量・筋力・身体機能が低下した状態を指します。

2019年に改訂されたアジア人向けの国際基準(AWGS2019)では、以下の3つの指標で診断されます。

指標 男性 女性
骨格筋量指数(SMI) 7.0 kg/m²未満 5.7 kg/m²未満
握力 28 kg未満 18 kg未満
歩行速度 / 5回立ち上がりテスト 1.0 m/秒未満 / 12秒以上 同左

骨格筋量の低下に加えて、筋力または身体機能のどちらかが基準を下回る場合に「サルコペニア」と診断されます。厚生労働省の調査や学会報告によれば、65歳以上の高齢者の約10〜20%に該当するとされており、決して珍しい病態ではありません。

本記事が属する上位ガイドも合わせてご覧ください。→ 高齢者に多い病気と症状 総合ガイド

サルコペニアの仕組み・種類

起こる仕組み

加齢とともに筋タンパク質の合成が低下し、分解が上回るようになります。さらに、身体活動の減少・タンパク質摂取不足・慢性炎症・ホルモン変化(成長ホルモン・テストステロンの低下など)が重なることで、筋肉の減少が加速します。

原発性と二次性

サルコペニアは原因により2種類に分類されます。

フレイルとの違い

よく混同される「フレイル」は、サルコペニア(筋肉の問題)に加えて、疲労感・活動低下・体重減少・歩行速度の低下などを総合的に捉えた「虚弱状態」の概念です。フレイルはサルコペニアを含む、より広い病態です。サルコペニアはフレイルの中核的な構成要素の一つとして位置づけられています。フレイルとは?チェック方法・予防・要介護との関係も併せてご覧いただくと、両者の関係がより明確になります。

サルコペニアに気づくためのサイン(症状)

サルコペニアに特有の症状はなく、以下のような変化として現れることが多いです。

  • 歩くスピードが遅くなった
  • 階段や立ち上がりがつらくなった
  • 転びやすくなった
  • ペットボトルのふたが開けにくい
  • 体重は変わらないのに体が細くなった(脂肪が増え筋肉が減る「サルコペニア肥満」)

これらは「年のせい」と見過ごされやすいですが、早期発見・早期介入の観点から、気になる変化があれば医師や医療チームへの相談をお勧めします。

在宅での管理・注意点

サルコペニアの予防・進行抑制には、運動(特に筋力トレーニング)タンパク質を中心とした栄養管理の組み合わせが重要とされています(日本サルコペニア・フレイル学会ガイドライン等より)。

運動面

  • レジスタンス運動(筋力トレーニング):椅子からの立ち座り・スクワット・かかと上げなどが自宅でも実施しやすいです。
  • 週2〜3回を目安に継続することが推奨されています。
  • 転倒リスクに配慮し、壁や椅子に手をついて行うなど安全確保が大切です。

栄養面

  • 1日のタンパク質摂取量は、体重1 kgあたり1.0〜1.2 g(可能なら1.2〜1.5 g)が目安とされています。
  • 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などを毎食バランスよく取り入れましょう。
  • 食欲低下や嚥下機能の問題がある場合は、管理栄養士や医師への相談が必要です。

家族が気をつけること

  • 「歩き方が変わった」「最近よく転ぶ」などの小さな変化を見逃さないことが早期発見につながります。
  • 食事の偏り(特にタンパク質不足)に気づいたら、食事内容の見直しを検討しましょう。
  • 運動を強制せず、本人のペースや体調に合わせて取り組むことが継続のコツです。
  • 訪問診療や地域の通いの場(サロンなど)を活用することで、医療・介護チームと連携しやすくなります。

受診・相談の目安

以下に該当する場合は、かかりつけ医や在宅医への相談をご検討ください。

  • 半年で2〜3 kg以上の体重減少がある
  • 転倒・骨折を繰り返している
  • 食事量・タンパク質摂取量が明らかに不足している
  • 歩行や立ち上がりが以前より明らかに困難になった
  • パーキンソン病・糖尿病・慢性呼吸器疾患(気管支炎・COPDなど)などの基礎疾患がある

サルコペニアは生活機能の低下と密接に関係するため、「受診するほどでもない」と判断せず、気軽に医師や看護師、ケアマネジャーへ相談することをお勧めします。

関連キーワード補足

サルコペニアとは:骨格筋量・筋力・身体機能が低下した状態。AWGS2019基準で診断されます。

サルコペニア 症状:転倒・歩行速度低下・握力低下・疲れやすさ。自覚しにくいため定期的な評価が重要です。

パーキンソン病:運動機能の低下・活動量の減少を通じてサルコペニアを引き起こす要因になり得ます。詳しくはパーキンソン病とは?初期症状・進行・在宅での注意点をご覧ください。

糖尿病 症状:高血糖による慢性炎症・インスリン抵抗性がサルコペニアのリスクを高めることが知られています。詳しくは高齢者の糖尿病|症状・合併症・在宅での管理をご覧ください。

あざみ野の訪問診療によるサポート(CTA)

メディカルクリニックあざみ野では、在宅での訪問診療を通じて、サルコペニア・フレイルのスクリーニングや栄養・運動指導のサポートを行っています。「最近よく転ぶ」「食が細くなった」など気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

👉 在宅医療のご相談・お問い合わせ
📞 TEL: 045-978-0455

よくある質問(FAQ)

Q1. サルコペニアは治りますか?
A. 完全に「治る」という表現は適切ではありませんが、適切な運動と栄養管理によって筋肉量・筋力の低下を緩やかにしたり、一部回復させたりできる可能性があるとされています。早期から取り組むほど効果が得られやすいと考えられています。

Q2. フレイルとサルコペニアはどう違いますか?
A. サルコペニアは主に「筋肉の量・力・機能の低下」を指します。フレイルはそれを含む広い概念で、疲労感・体重減少・活動量の低下なども加味した「全体的な虚弱状態」です。サルコペニアはフレイルの重要な構成要素の一つです。

Q3. 自宅でサルコペニアかどうか調べる方法はありますか?
A. 完全な診断には医療機関での検査(DXA法や生体電気インピーダンス法による筋肉量測定)が必要ですが、「握力が低い」「歩くのが遅くなった」「椅子から立ち上がれない」などのセルフチェックも参考になります。気になる場合はかかりつけ医にご相談ください。

Q4. 何歳から気をつければよいですか?
A. 筋肉量は40〜50代から年間約1〜2%ずつ低下し始めるとされています。65歳以降に顕著になりますが、予防の観点からは中年期からの運動習慣・タンパク質摂取が重要です。

Q5. サプリメントでサルコペニアを予防できますか?
A. ロイシンを含む必須アミノ酸・ビタミンD・クレアチンなどに関する研究が進められていますが、現時点でサプリメント単独での予防・治療効果は確立されていません。まずは食事からのタンパク質摂取を優先し、不足を補う位置づけとして医師・管理栄養士に相談のうえ使用してください。

関連記事

本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 院長
専門:消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全

略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。

公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員 / 全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー / 神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役

メディカルクリニックあざみ野 在宅医療のご案内

在宅医療・訪問診療、高齢者医療やがん緩和ケア、心不全・呼吸不全の療養について、気になることがあればお気軽にご相談ください。

サルコペニア・フレイルの評価、栄養・運動指導、多職種との連携など、ご自宅での療養生活を包括的にサポートします。

👉 在宅医療のご相談・お問い合わせ
📞 TEL: 045-978-0455

ご相談の際にご用意いただくとスムーズなもの

  • 薬剤情報提供書またはお薬手帳の写し
  • 医療保険証・公費証明書・各種受給者証の写し
  • 介護保険証・介護保険負担割合証の写し
  • 限度額適用認定証等の写し
  • 印鑑