厚生年金と介護費用|老後の年金と負担の基礎知識
厚生年金は、会社員・公務員などが加入する公的年金制度であり、老後の生活費や介護費用を支える重要な収入源です。しかし、受給額だけで介護費用をまかなえるかどうかは、個人の加入歴や介護サービスの利用状況によって大きく異なります。この記事では、厚生年金の仕組みと受給額の目安、そして介護費用との関係を、介護をする家族やケアマネジャーの方々に向けてわかりやすく解説します。
この記事は医学的・制度的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療・給付額の確定を行うものではありません。具体的な手続きや給付額については、年金事務所・市区町村窓口、またはかかりつけ医にご相談ください。
厚生年金とは?
厚生年金は、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せされる形で支給される「2階建て」の公的年金制度です。主に民間企業の会社員や公務員が対象となり、在職中に給与に応じた保険料を事業主と折半で負担します。
国民年金と厚生年金の違い
| 項目 | 国民年金 | 厚生年金 |
|---|---|---|
| 加入対象 | 20〜60歳の全国民 | 会社員・公務員等 |
| 保険料 | 定額(2024年度:月16,980円) | 標準報酬月額の18.3%(労使折半) |
| 受給額 | 一定(満額:月約68,000円) | 加入期間・報酬によって異なる |
| 支給開始年齢 | 原則65歳 | 原則65歳 |
厚生年金受給者は、老齢基礎年金(国民年金部分)と老齢厚生年金(厚生年金部分)の合計を受け取ります。国民年金と厚生年金の違いを理解することが、老後の資金計画の第一歩です。
詳しい介護保険制度の全体像は、介護保険・制度・費用のすべて|申請から給付までもあわせてご覧ください。
費用の内訳と相場
厚生年金 いくらもらえるか:受給額の目安
厚生年金の月額受給額は、加入期間と平均標準報酬額(給与の平均)によって計算されます。厚生労働省の調査(令和4年度厚生年金保険・国民年金事業年報)によると、厚生年金受給者(老齢基礎年金含む)の平均受給月額は約14万円〜15万円程度です。
厚生年金 満額という概念は国民年金には存在しますが(40年納付で満額)、厚生年金は報酬比例のため「満額」の上限はなく、高収入・長期加入ほど受給額が大きくなります。
介護費用との比較:初期費用・月額の目安
介護が必要になった場合、次のような費用が発生します。
在宅介護の場合(月額目安)
| 費用項目 | 概算 |
|---|---|
| 介護保険サービス自己負担(1割) | 約15,000〜30,000円 |
| 食費・日用品等 | 約30,000〜50,000円 |
| 訪問診療費(自己負担分) | 約5,000〜15,000円 |
| 合計目安 | 約50,000〜100,000円/月 |
施設介護の場合(月額目安)
| 施設種別 | 月額費用目安(自己負担) |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 約70,000〜130,000円 |
| 介護老人保健施設(老健) | 約80,000〜140,000円 |
| 有料老人ホーム(介護付き) | 約150,000〜300,000円以上 |
月平均14万円程度の厚生年金収入だけでは、特に施設入所時には費用が上回るケースも少なくありません。年金額と介護費用の差額をどう補うかを、早めに検討することが大切です。
費用を抑える制度・軽減措置
介護費用の自己負担を軽減する主な制度は以下のとおりです。
① 高額介護サービス費
介護保険の1か月の自己負担が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です(区分によって上限額が異なります)。
② 補足給付(特定入所者介護サービス費)
施設入所中の食費・居住費を軽減する制度です。世帯の収入・資産状況が基準を満たす場合に適用されます。
③ 住民税非課税世帯への軽減
住民税が非課税の世帯に対しては、介護保険料や自己負担限度額が低く設定されています。厚生年金の受給額が比較的少ない方は、この区分に該当する場合があります。
住民税非課税世帯の詳しい条件と介護費用への影響については、住民税非課税世帯とは?介護費用への影響を解説をご参照ください。
④ 高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護費用の合計が年間の上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。医療と介護の両方にかかっている場合に特に有効です。
費用シミュレーション例
モデルケース:75歳男性、要介護2、在宅療養、厚生年金受給者
- 厚生年金・老齢基礎年金合計:月150,000円
- 訪問介護・デイサービス等の介護保険自己負担:月25,000円
- 訪問診療(自己負担1割):月8,000円
- 食費・日用品等:月40,000円
- 支出合計:月73,000円
- 収支差引:+77,000円
この例では月々の収支に余裕が生まれますが、要介護度が上がったり施設入所が必要になったりすると、収支のバランスは大きく変わります。あくまでも参考値としてご活用ください。
申請・利用開始までの流れ
厚生年金の受給申請の流れ
- 65歳の誕生日の3か月前頃に日本年金機構からハガキ(年金請求書)が届く
- 最寄りの年金事務所または市区町村の窓口で請求手続きを行う
- 審査後、年金証書が届き、受給開始(受給開始月の翌々月から偶数月に振込)
介護保険申請の流れ
- 市区町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センターに相談・申請
- 訪問調査・主治医意見書の作成
- 要介護認定の結果通知(申請から原則30日以内)
- ケアプランの作成、サービス利用開始
年金の受給開始と介護保険の申請は別々の手続きです。それぞれ早めに準備を進めることをおすすめします。
関連キーワード補足
厚生年金 国民年金(2つの年金の関係)
厚生年金加入者は、国民年金にも同時加入しており、老後は両方の年金を受け取ります。一方、自営業者・フリーランスなどは国民年金のみの加入となるため、老後の受給額は厚生年金加入者より少なくなる傾向があります。
厚生年金 計算(受給額の計算方法)
老齢厚生年金の計算式は複雑ですが、基本的には「平均標準報酬額 × 給付乗率 × 加入月数」で算出されます(2003年4月以降の加入期間の場合)。年金事務所への相談や、日本年金機構の「ねんきんネット」でおおよその受給見込額を確認できます。
厚生年金 満額(国民年金の満額との違い)
国民年金には「満額(40年納付で月約68,000円)」という概念がありますが、厚生年金は報酬比例のため上限がなく、加入期間が長く報酬が高いほど受給額は増えます。
国民年金 厚生年金 違い(まとめ)
国民年金は全国民共通の「基礎年金」、厚生年金は会社員・公務員向けの「上乗せ年金」です。介護費用の計画を立てる際は、ご自身がどちらの年金をいくら受け取れるかを把握することが重要です。
あざみ野の訪問診療によるサポート(CTA)
メディカルクリニックあざみ野では、在宅医療・訪問診療を通じて、高齢者やそのご家族が安心して療養生活を送れるようサポートしています。厚生年金や介護保険の収入の範囲内で利用できるサービスについてもご相談に応じています。
「年金収入と介護費用のバランスが心配」「在宅で受けられる医療サービスについて知りたい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
在宅医療のご相談・お問い合わせ
TEL: 045-978-0455
よくある質問(FAQ)
Q1. 厚生年金だけで介護費用はまかなえますか?
A. 在宅介護であれば、要介護度が低い場合は年金収入の範囲内で対応できるケースもあります。ただし、要介護度の上昇や施設入所が必要になると、年金収入を上回る費用がかかることもあります。高額介護サービス費や補足給付などの軽減制度も活用しながら計画を立てることをおすすめします。
Q2. 厚生年金の受給額はどうすれば確認できますか?
A. 日本年金機構の「ねんきんネット」(インターネット)や「ねんきん定期便」(毎年誕生月に郵送)で確認できます。詳しい計算については、最寄りの年金事務所にご相談ください。
Q3. 厚生年金を受給しながら介護保険も利用できますか?
A. はい、できます。厚生年金は老後の所得保障、介護保険は介護サービスを受けるための制度であり、別々の仕組みです。ただし、収入(年金収入を含む)によって介護保険サービスの自己負担割合(1〜3割)が決まります。
Q4. 介護保険の自己負担割合は年金収入によって変わりますか?
A. 変わります。年金収入を含む合計所得金額が一定以上の場合、自己負担割合が2割または3割となります。詳細は市区町村の窓口または担当ケアマネジャーにご確認ください。
Q5. 国民年金のみ受給の場合、施設入所費用はどうまかないますか?
A. 国民年金の満額(月約68,000円)のみでは、多くの施設の費用をまかなうことが難しい場合があります。補足給付(特定入所者介護サービス費)や高額介護サービス費の活用、生活保護の申請(一定要件を満たす場合)なども選択肢となります。地域包括支援センターやケアマネジャーにご相談ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 院長
専門: 消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。