住民税非課税世帯とは?介護費用への影響をわかりやすく解説
「住民税非課税世帯」という言葉を耳にしたことがあっても、具体的な条件や介護費用との関係まで把握している方は多くありません。結論から述べると、住民税非課税世帯に該当すると、介護保険の自己負担額や高額介護サービス費の上限額が軽減される可能性があります。本記事では、非課税世帯の定義・判定基準から介護費用への影響、申請の流れまでをわかりやすく解説します。なお、個々の状況によって適用される制度や金額は異なるため、詳細は担当ケアマネジャーや市区町村窓口にご確認ください。
本記事は佐藤靖郎医師(メディカルクリニックあざみ野 院長・医学博士)の監修のもとに作成しています。診断・治療の判断は必ず医師や専門家にご相談ください。
非課税世帯とは?(定義と判定基準)
住民税非課税世帯とは、世帯員全員が住民税(市区町村民税)を課税されていない世帯のことです。個人単位ではなく「世帯全体」で判定される点が重要です。
住民税が非課税になる主な条件
住民税が非課税となる主な要件は以下のとおりです(地方税法第295条)。
| 条件 | 概要 |
|---|---|
| 生活保護受給者 | 受給期間中は非課税 |
| 障害者・未成年者・寡婦(夫)等 | 前年の合計所得金額が135万円以下(2024年度時点) |
| 所得が一定以下 | 自治体により異なるが、東京23区・横浜市等では「前年の合計所得金額が45万円以下(単身)」など基準が設けられている |
※ 所得基準の具体的な金額は自治体によって異なります。横浜市など政令指定都市では独自の基準が定められている場合があります。詳細はお住まいの市区町村にご確認ください。
「所得」と「収入」の違い
混同しやすいポイントとして、「収入」と「所得」は異なります。年金収入の場合、受け取った額(収入)から「公的年金等控除額」を差し引いた後の金額が「所得」となります。たとえば65歳以上で年金収入のみの場合、収入が約155万円以下であれば所得が45万円以下となり、非課税の目安になることがあります(横浜市の場合)。
介護費用への影響:非課税世帯が受けられる主な軽減措置
住民税非課税世帯に認定されると、介護保険に関連する複数の費用軽減措置を受けられる場合があります。介護保険の仕組み全般についてはこちらの解説記事もあわせてご参照ください。
① 高額介護サービス費の自己負担上限額の引き下げ
介護サービスの1か月の自己負担合計が一定額を超えた場合に超過分が払い戻される「高額介護サービス費」制度では、所得区分によって上限額が異なります。
| 所得区分 | 月額上限(自己負担) |
|---|---|
| 課税世帯(一般) | 44,400円 |
| 住民税非課税世帯(世帯) | 24,600円 |
| 住民税非課税世帯(個人所得が低い方) | 15,000円 |
| 生活保護受給者等 | 15,000円 |
※ 2024年8月以降の制度改正内容を含む。詳細は厚生労働省または市区町村にご確認ください。
② 介護保険施設の居住費・食費の軽減(補足給付)
特別養護老人ホームや介護老人保健施設など介護保険施設に入所する場合、食費・居住費は原則として全額自己負担ですが、住民税非課税世帯は「特定入所者介護サービス費(補足給付)」により、負担限度額まで軽減されます。
負担限度額は所得・資産の状況によって第1〜第4段階に分かれており、非課税世帯は第1〜第3段階に該当します。ただし、預貯金などの資産が一定額(単身1,000万円超など)を超える場合は対象外となります。
③ 介護保険料自体も軽減
介護保険料は市区町村が設定する所得段階に基づいて決まります。住民税非課税世帯は「低所得段階」に区分され、標準保険料(基準額)よりも低い保険料が適用されます。
費用の内訳と相場
初期費用・月額の目安
在宅介護と施設介護のおおまかな費用目安を示します(自己負担1割の場合)。
在宅サービスの月額目安(要介護2・1割負担の場合)
- 訪問介護(週3回):約10,000〜15,000円
- 通所介護(週2回):約10,000〜12,000円
- 福祉用具レンタル:約3,000〜5,000円
施設入所の月額目安(特別養護老人ホーム・多床室)
- 介護サービス費(1割):約25,000〜30,000円
- 食費・居住費(軽減なし):約65,000〜75,000円
- 住民税非課税(第2段階)の場合:食費・居住費が約18,000〜25,000円程度に軽減される場合があります
※ 上記はあくまで目安です。施設の種類・要介護度・居室タイプ・自治体によって異なります。
費用シミュレーション例
【例】80歳・女性・単身・要介護2・厚生年金受給者
- 年金収入:年間120万円(月10万円)
- 預貯金:500万円
- 住民税:非課税(第2段階相当と仮定)
特別養護老人ホーム(多床室)に入所した場合:
| 項目 | 軽減なし | 補足給付適用後 |
|---|---|---|
| 介護サービス費(1割) | 約27,000円 | 約27,000円 |
| 食費 | 約43,000円 | 約11,000円 |
| 居住費 | 約24,600円 | 約11,010円 |
| 合計目安 | 約94,600円 | 約49,000円 |
※ 数値は厚生労働省の令和6年度基準をもとにした概算です。実際の負担額は施設・居室タイプ・所得段階により異なります。
申請・利用開始までの流れ
STEP 1:要介護認定の申請
介護保険サービスを利用するには、まず要介護認定の申請が必要です。市区町村の窓口または地域包括支援センターに申請し、認定調査・主治医意見書をもとに要介護度が決定されます。
STEP 2:非課税世帯の確認
住民税の課税状況は毎年1月1日時点の所得をもとに判定されます。課税状況は市区町村の住民税担当窓口で確認できます。
STEP 3:補足給付・高額介護サービス費の申請
- 補足給付(特定入所者介護サービス費):市区町村に「介護保険負担限度額認定申請書」を提出。認定証が発行されます。
- 高額介護サービス費:市区町村から案内が届き次第、申請(または自動支給)手続きを行います。
STEP 4:ケアマネジャーと相談・ケアプラン作成
要介護1以上の方は担当ケアマネジャーがケアプランを作成します。費用の見込みや利用するサービスについて相談しながら進めます。
STEP 5:サービス利用開始
ケアプランが確定したら、各事業者と契約してサービスを開始します。
相談窓口のご案内:地域包括支援センターは、介護保険の申請や費用相談など幅広い支援を無料で行っています。まずはお近くのセンターにご相談ください。
関連キーワード補足
非課税世帯とはわかりやすく
一言でいえば「世帯全員が住民税ゼロの世帯」です。収入・所得・家族構成・障害の有無などによって判定されます。
厚生年金と非課税世帯の関係
厚生年金の受給額が比較的少ない方(単身で年金収入が155万円程度以下など)は、住民税非課税世帯に該当する可能性があります。ただし、他の所得や資産状況も判定に影響するため、個別の確認が必要です。
介護保険と住民税非課税世帯
介護保険では所得段階が「課税」か「非課税」かによって、保険料・自己負担上限・施設費用の軽減幅が変わります。本記事で解説した制度を活用することで、経済的な負担を一定程度軽減できる場合があります。
介護認定を受ける重要性
どの軽減制度も、原則として介護保険の要介護認定を受けていることが前提となります。「まだ大丈夫」と思っていても、早めに認定申請をしておくことで、必要なときにスムーズにサービスを利用できます。
あざみ野の訪問診療・在宅医療によるサポート
メディカルクリニックあざみ野では、在宅での療養を続けたい高齢者やそのご家族を対象に、訪問診療・在宅医療を提供しています。住民税非課税世帯の方が受けられる介護費用の軽減制度や、医療費の公費負担制度についても、診療の中でご案内・連携をサポートします。
「施設か在宅か迷っている」「介護費用の見通しを立てたい」「訪問診療を始めるにはどうすればよいか」などのご相談も歓迎しています。
お気軽に在宅医療のご相談・お問い合わせフォームからご連絡いただくか、お電話でご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 住民税非課税世帯かどうかはどこで確認できますか?
A. お住まいの市区町村の住民税担当窓口(市民税課など)で確認できます。「非課税証明書」を取得することで、介護保険の申請などに利用できます。
Q2. 世帯の一部が課税対象でも非課税世帯になりますか?
A. なりません。住民税非課税世帯は「世帯全員」が非課税であることが条件です。同居の家族の中に課税者がいる場合は該当しません。なお、世帯分離(世帯を分ける手続き)により判定が変わる場合がありますが、制度の意図に沿った適正な利用が求められます。詳細は市区町村窓口にご相談ください。
Q3. 年金だけで生活していれば非課税世帯になりますか?
A. 必ずしもそうとは限りません。厚生年金など受け取る年金の額によっては課税対象となる場合があります。65歳以上の単身者であれば、年金収入が概ね155万円以下(自治体により異なる)であれば非課税となることが多いですが、不動産収入や預貯金の利子なども合わせた「合計所得」で判定されます。
Q4. 補足給付(負担限度額認定)の申請はいつすればよいですか?
A. 施設入所が決まったタイミングで速やかに申請することをお勧めします。認定証が発行された月からの適用となる場合が多く、遡っての適用は原則できません。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しながら準備を進めると安心です。
Q5. 非課税世帯の判定は毎年変わりますか?
A. はい、住民税の課税状況は毎年度更新されます。前年の所得をもとに毎年6〜7月頃に新しい課税状況が確定します。介護保険料の段階や補足給付の認定も1年ごとに更新されるため、収入状況が変わった場合は改めて確認・申請が必要です。
関連記事
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 院長
専門:消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。