高齢者の低栄養は、筋力低下・免疫力の低下・褥瘡(じょくそう)のリスクを高める深刻な問題です。栄養補助食品は、通常の食事だけでは補いにくいエネルギーやたんぱく質・ビタミン・ミネラルを効率よく摂取するための食品であり、在宅療養中の高齢者や嚥下(えんげ)機能が低下した方の低栄養対策として広く活用されています。本記事では、栄養補助食品の種類・選び方・注意点を医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。
本記事は情報提供を目的としています。個々の症状・状態に応じた食品の選択・使用については、必ず担当医や管理栄養士にご相談ください。
栄養補助食品とは、食事で不足しがちな栄養素を補うことを目的として設計された食品の総称です。医薬品ではなく食品に分類されるため、ドラッグストアや薬局・通販などで幅広く入手できます。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、高齢者は若年層と比べてエネルギーや各種栄養素が不足しやすいことが示されており、低栄養の予防・改善が重要な課題とされています。特に在宅療養中の高齢者は、食欲の低下・嚥下機能の低下・消化吸収能力の変化などにより、通常の食事だけでは必要量を確保しにくいケースが少なくありません。
なお、「栄養補助食品」「栄養補完食品」「介護食」「濃厚流動食」などは呼び方が異なっても目的が重複することがあります。本記事ではこれらを広く「栄養補助食品」として解説します。
👉 嚥下・食事・栄養に関する包括的な情報は、親ページ「高齢者の嚥下・食事・栄養ケア ガイド」もあわせてご覧ください。
| 種類 | 形状 | 主な特徴 | こんな方に |
|---|---|---|---|
| 経口補水・栄養ドリンク型 | 液体 | 飲みやすく携帯しやすい。エネルギー・たんぱく質・ビタミンを凝縮 | 食欲不振・水分摂取が少ない方 |
| ゼリー型 | ゼリー状 | 嚥下しやすく誤嚥リスクを軽減しやすい。水分も同時に補給できる | 嚥下機能が低下している方 |
| 粉末・粉末スープ型 | 粉末 | 料理や飲み物に混ぜて使用可能。たんぱく質・ビタミン補給に向く | 食事に自然に組み込みたい方 |
| 固形・バー型 | 固形 | 咀嚼(そしゃく)できる方向け。手軽に間食として摂取できる | 軽度の食欲低下がある方 |
| 濃厚流動食 | 液体・半固形 | 医療・介護の現場でも使用される高栄養タイプ。胃ろうにも対応した製品がある | 経口摂取が困難な方・医療管理下の方 |
注意: 濃厚流動食の一部は医師・管理栄養士の指示のもとで使用することが推奨されています。
嚥下機能が低下している高齢者の場合、液体よりもゼリー型・半固形型の方が誤嚥リスクを下げやすい傾向があります。日本摂食嚥下リハビリテーション学会が策定した「嚥下調整食分類2021」を参考に、本人の嚥下状態に合ったテクスチャーを選ぶことが推奨されます。
嚥下機能の低下が気になる方は、誤嚥性肺炎とは?原因・症状・在宅での予防も参考にしてください。
成分表示を確認し、エネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物に加えて、ビタミンD・カルシウム・亜鉛・鉄などが含まれているかを確認しましょう。1パックあたり200〜400kcalを目安に、1日の食事内容とのバランスを考慮します。
腎機能が低下している方は、カリウムやリンの過剰摂取に注意が必要です。カリウムの多い食品・少ない食品一覧|腎臓が気になる方へもあわせて確認し、担当医・管理栄養士と相談しながら製品を選んでください。また、抗凝固薬(ワルファリンなど)を服用中の方はビタミンKの含有量にも注意が必要です。
栄養補助食品は継続して摂取することで効果が期待できます。本人が飲みやすい・食べやすいと感じる味や形状であることが継続のカギです。ドラッグストアで購入できる市販品から、通販・医療機関・薬局での取り寄せまで、入手経路も幅広く確認しましょう。
栄養補助食品はあくまでも食事の補助です。通常の食事を置き換えるものではなく、不足分を補う目的で活用することが基本的な考え方です。
栄養補助食品自体に利用条件はなく、市販品であれば誰でも購入できます。ただし、以下の点を事前に確認することが重要です。
- 医療機関・介護施設での使用: 医師・管理栄養士の指示に従い、施設のルールに合った製品を使用する
- 在宅療養中の方: 訪問診療医や訪問管理栄養士と相談のうえ、本人の状態に合った製品を選ぶ
- 胃ろう使用中の方: 経管栄養に対応した専用の濃厚流動食を使用する必要があります。詳しくは胃ろうとは?メリット・デメリット・在宅での管理をご覧ください
- 現在の食事量・栄養状態を確認する(体重変化・食欲・食事内容の記録)
- 担当医・管理栄養士に相談する(持病・服薬・嚥下状態を踏まえた提案を受ける)
- ドラッグストアや薬局、通販などで少量から試す
- 本人の反応・体重・体調の変化を記録する
- 定期的に担当医・管理栄養士に報告し、見直す
メディカルクリニックあざみ野では、在宅療養中の高齢者に対して、訪問診療による栄養状態の評価・低栄養対策のサポートを行っています。嚥下機能の低下・食欲不振・体重減少などでお困りの場合は、栄養補助食品の選択だけでなく、原因の評価や食事内容の調整、必要に応じた多職種連携(管理栄養士・訪問看護師・言語聴覚士など)も含めた包括的なサポートをご提案します。
ご相談・お問い合わせは、在宅医療のご相談・お問い合わせよりお気軽にどうぞ。
はい、多くの栄養補助食品はドラッグストアや薬局、スーパー、通販で入手できます。ただし、医療・介護向けの濃厚流動食は薬局の取り寄せや通販での購入が中心となる場合があります。担当医や薬剤師に相談することで、状態に合った製品を案内してもらえることもあります。
腎機能が低下している方は、カリウム・リン・たんぱく質の含有量に注意が必要です。腎臓病患者向けに設計された低カリウム・低リン製品も市販されていますが、使用前に必ず担当医・管理栄養士に確認してください。自己判断での使用はお控えいただくことをお勧めします。
嚥下機能が低下している方には、ゼリー型や半固形タイプが比較的飲み込みやすいとされています。ただし、嚥下状態は個人差が大きいため、言語聴覚士や担当医による嚥下評価を受けたうえで選択することが重要です。誤嚥のリスクがある場合は専門家への相談を優先してください。
栄養補助食品だけで全ての栄養をまかなうことは、製品によっては可能な場合もありますが、医師の管理なしに長期間行うことは推奨されません。食事が著しく摂れない状態が続く場合は、原因の検索や医療的な対応(経管栄養・点滴など)が必要になる場合があります。早めに医師にご相談ください。
市販の栄養補助食品は、原則として介護保険・医療保険の給付対象外です。ただし、医師が処方する経腸栄養剤(医薬品)は保険適用となる場合があります。費用や保険適用については担当医や薬剤師にご確認ください。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/メディカルクリニックあざみ野 理事長
専門: 消化器外科 / 在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
在宅医療・訪問診療、高齢者医療やがん緩和ケア、心不全・呼吸不全の療養について、気になることがあればお気軽にご相談ください。栄養状態の評価や低栄養対策、嚥下機能のサポートなど、患者さんとご家族の療養生活を多職種で支援いたします。
📞 TEL:045-978-0455
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